陶磁器選びの参考に!産地や歴史など焼き物の基礎知識を紹介

陶磁器

代表的な陶磁器の産地

石を原料とする「磁器」や土を原料とする「陶器」など、全国各地に個性豊かな焼き物の産地があります。採取される土や陶工の技術、そして積み上げてきた歴史を土台に、大量生産の工業製品とは一線を画した陶磁器が作られています。ここでは全国の代表的な産地を紹介し、それぞれの特徴と歴史を紹介していきます。

瀬戸焼

陶器を「瀬戸物(せともの)」と呼ぶことからも分かるように、焼き物の産地の代表格として知られています。釉薬陶器(器の表面を覆うガラス質の釉薬をかけた陶器)を作っていた猿投窯(さなげよう)から技術が伝わり、12世紀後半には「古瀬戸」と呼ばれる仏花瓶や壺などの宗教関係の道具が作られています。 その後、瀬戸で作られる製品は、日常用品や茶道具の生産にシフトしていき、18世紀後期には磁器も作られ始めます。現在でも陶器と磁器の両方が生産されており、「瀬戸物=日本の焼き物」といった認識につながるほど、様々な技術を取り入れていった産地です。

美濃焼

岐阜県東部で作られる美濃焼は、地理的にも瀬戸と近く、そのルーツはともに須恵器を生産していた猿投窯にあります。美濃焼の隆盛は、茶道の発展と深く関係しており、桃山時代(1573年〜1603年)のわずか30年の間に、「織部」「志野」「黄瀬戸」といった様々な優品が作られていきます。この時期には、千利休やその弟子の古田織部などが活躍し、茶人たちの指導により、斬新なデザインの茶陶が次々に誕生しました。 江戸時代に入ると美濃焼は日用品を多く生産し、現代でも食器類の生産量は全国で約も有数のシェアを占めています。

備前焼

他の産地の多くが、表面に釉薬というガラス質のうわぐすりを使用するなか、備前焼は高温で焼きしめた非常にシンプルな焼き物です。その分、土の性質と炎の加減で独特の風合いが生まれ、多くの焼き物好きを虜にする独特の陶器になっています。 1200度から1300度の高温でゆっくり焼しめた器は、土の性質や窯への詰め方、焚き方の工夫などによって様々な表情を見せてくれます。窯のなかで表面に付着した灰が溶け、胡麻をふりかけたような模様になった「胡麻」や器の一部が灰に埋もれグレーや黒色に変化した「棧切り」など独特の名称が付けられた窯変(ようへん)が魅力にとなっています。

有田焼

約400年前に日本ではじめて作られた磁器です。有田焼が始まった初期のころは、「染付(そめつけ)」と呼ばれる白地に藍色の図柄を描いた器が主に生産されていました。その後、17世紀中ごろになると、多彩色で装飾された「色絵(いろえ)」が作られ始めます。なかでも、乳白色の素地に鮮やかな赤色を使用した「柿右衛門様式(かきえもんようしき)」や厳格な管理のもとに幕府や大名などへの献上品として生産された「鍋島様式(なべしまようしき)」などが有名です。有田焼は十数キロ離れた伊万里港から船で運搬されていたため、別名伊万里焼とも呼ば、日本だけではなくアジアやヨーロッパの王侯貴族の間でも絶大な人気を博しました。

九谷焼

石川県の伝統的な陶磁器である九谷焼は、豪華絢爛な色合いの焼き物として、多くの人の心を捉えています。なかでも赤・黄・緑・紫・紺青の5色を使用した「五彩手(あるいは九谷五彩)」は九谷の基本であり、素焼きした陶磁器の上から模様を描く「上絵付け(うわえつけ)」の技法を生かしたカラフルな色合いが特徴です。ほかにも、赤色で綿密に人物や小紋を描いた宮本屋窯の「赤絵細描」、反対に赤を使わず、黄・緑・紫・紺青の四彩を使った「青手」、金で彩色した「金襴手(きんらんで)」などもにも優れた作品が多く存在します。

日本の陶磁器の歴史

日本での焼き物の歴史は古く、約1万2000年前の縄文時代から、個性的なデザインの縄文土器が作られていました。その後、文様が少なく実用的な弥生土器が主流となり、古墳時代には窯(かま)と轆轤(ろくろ)の技術が朝鮮から伝わり、高温で焼かれた硬質の須恵器(すえき)が登場します。

奈良時代から平安時代にかけては、陶器の表面をガラス質の釉薬で覆い色を付ける製法も一部で用いられ、瀬戸焼や備前焼などの産地もしだいに確立していきます。ちなみに、中世から現在まで生産を続けている瀬戸、越前、常滑、信楽、丹波、備前の6つの窯を「日本六古窯(にほんろっこよう)」と呼び、技術と文化を継承する貴重な存在として日本遺産にも認定されています。室町時代の後半には茶道の隆盛とともに、茶人たちの影響を受けた美濃焼や伊賀焼も発展します。

硬く美しい白色に特徴のある磁器の生産は、江戸時代に始まり、多彩色で装飾された「色絵(いろえ)」はヨーロッパでも人気を博し、その乳白色の美しさは「白い金」とまで呼ばれるようになります。磁器は「石もの」とも称ばれるように、長石と珪石を多く含む粘土を使用し、陶器より高温のおよそ1300度で焼かれます。そのため、より硬くて滑らかな質感があり、叩くと金属のような澄んだ音がします。 その後も時代の要請によって、様々な技術を取り入れながら陶磁器は発展し、現在でも生活に欠かせない道具として使われ続けています。機能面だけではなく、デザイン性や食材との色味のバランスなど、器には美的要素がいつの時代にも求められていることが分かります。

おわりに ~陶器を長く使い続けるために~

購入したお気に入りの陶磁器は、大切にそして長期間にわたって使い続けていきたいものです。そこで、特に水や油を吸い込みやすい陶器については、「目止め」と呼ばれるシミやひび割れを防止する作業することをお勧めします。目止めの方法はいろいろありますが、最も一般的なやり方は、買ってきた器をお米のとぎ汁につけて、15〜20分ほど沸騰させるというものです。米のでんぷん質が陶器の表面にある小さな穴をふさぎ、油分や水分の侵入を防ぐ効果があります。米の研ぎ汁がない場合は、小麦粉や片栗粉に含まれるでんぷん質でも代用が効きます。

また、目止めを行った後は、水分が器の中まで浸透しているので、しっかり乾燥させるようにしてください。水分が残ったまま食器棚などに置いてしまうと、カビの原因になることがあります。

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